2009年2月と古い情報ではありますが、Ernst & Youngが、PPA時の企業価値に占める無形資産やのれんの比率、認識された無形資産の種類別の割合を業種別に分析した資料を公開していました。https://robertsobkow.weebly.com/uploads/8/5/6/4/8564850/2_e_y.pdf
なお、当資料では企業価値を買収金額+純ファイナンシャルデット(おそらく有利子負債-現金及び同等物)と定義しています。
企業価値に占めるのれん、無形資産の割合
詳細は上記リンクをご確認いただきたいのですが、いくつか下記に記載します。
のれん÷企業価値 | 無形資産÷企業価値 | |
---|---|---|
全業種 | 47% | 23% |
Consumer Products | 65% | 27% |
Automotive | 42% | 14% |
Technology | 60% | 22% |
おそらく無形資産の認識に伴う税効果考慮後の数値であることを勘案しても、個人的な感覚と比較するとのれんの割合が大きい印象を受けました。
なお、無形資産を認識していない事例は23%<とのことです。
どのような無形資産が認識されているのか。
一番多く認識された無形資産は顧客関係で、無形資産を認識した事例の44%(全業種合計(以下同様))で認識されていたそうです。次がブランド/トレードマークで31%、3番目が技術で20%とのことです。顧客関係の割合が一番高いのですが、個人的には日本の事例ではもっと高くなるのではないかと思いました。例えばAutomotiveの顧客関係の認識割合は36%とのことですが、おそらく日本のAutomotiveで事例を抽出すると、半分以上は認識されているのではないかと思います。
PPAの専門家として興味深いのは競業避止義務の認識割合(8%)が高いことです。おそらく日本企業を対象にして分析するとここまでの認識割合にならないと思います。この辺りは、海外企業と日本企業で、役員、従業員の方の立場や、会社との契約形態に依存しますので、海外と日本の商慣行の違いがでる点かもしれません。
あと、すべての業種においてOther intangible assetsの割合が大きい点は留意が必要かもしれません。この分析はすべて公開情報のみに基づいて実施しているとのことですので、例えばブランドを認識していても、開示上は特定の無形資産として開示していない場合は、結果としてOther intangible assetsに集計されているというケースも多いと思われますので、実際の無形資産の認識割合はここで記載されている数値よりは大きいのかもしれません。
なお、資料のScopeにも記載されていますが、分析対象の企業の半分程度は米国企業のようで、日本企業は含まれていないとのことです。
いずれ、時間を見つけて日本企業を対象にした分析を行って、当コラムにアップしたいと思います。