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負の「のれん」とPPA

今回は、RIZAPでも話題になりました負の「のれん」について解説するとともに、PPA(Purchase Price Allocation)との関係についてお話しします。

負の「のれん」とは?

負の「のれん」を理解するうえでは、まずは買収時に生じる「のれん」を理解する必要があります。「のれん」はPPAは経営者が認識すべき課題です!」でも記載しましたが、以下の定義です。

取得原価としての支払対価総額と、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額との間に差額であり、この差額が借方に生じた場合を「のれん」、貸方に生じた場合を負の「のれん」という(企業会計基準第 21 号 企業結合に関する会計基準98項参照)。

ポイント

Ø  負の「のれん」は、連結会計年度の利益(特別利益)として一括計上されます。

連結上、無形資産を計上すると負の「のれん」が増える?

「のれん」も負の「のれん」も算出にあたっては、買収時点において企業結合に伴って取得・移転される個々の資産や負債を原則として、時価評価する必要があります。

下図「ケース①」は、買収企業の資産及び負債を時価評価したイメージです。「ケース①」の場合、支払対価総額10の時価を資産150(時価)、負債100(時価)に配分(アロケーション)して、差額を負の「のれん」40としていることがわかります。

仮に、下図「ケース②」のように、PPAを実施し単体上計上されている資産負債の時価評価のほか、連結上又は企業結合上、無形資産(顧客関連資産50)を計上したとしましょう

「ケース②」の場合、顧客関連資産を50計上することで、無形資産を認識しなかった「ケース①」の場合と比較して、負ののれんが顧客関連資産50だけ増えることになります。(税効果は省略

実務上の取り扱い

基準では、負の「のれん」が生じる場合、原則として以下の処理をすることが求められております。

(1) 取得企業は、すべての識別可能資産及び負債が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。

(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。(企業結合に関する会計基準33)

上記のように、負の「のれん」が生じる場合、資産負債の配分(アロケーション)が適切かどうかを再度見直しすることが求められております。

これは、負の「のれん」が生じること自体は、一般に受け入れた資産・負債の時価の差額よりも支払対価総額のほうが低いという状況であり、会計上特殊な状況と考えられているためです。

従って、会計監査人に対して、負の「のれん」が生じた根拠やその合理性つき十分に疎明する必要があります。

上記の「ケース②」を考えると、負の「のれん」が生じる会計上特殊な状況に加えて、連結上無形資産を認識するということは、負の「のれん」が増加することになります。

PPAの実務上、負の「のれん」が生じるようなケースで無形資産を認識するときには、慎重な検討が必要と考えられます。

以 上